

リスキリングを失敗せずに進めるにはどうしたら良いかな?
同じように考えている40代のITエンジニアの方は多いのではないでしょうか。
情報処理推進機構(IPA)の調査では、40代以上のエンジニアの約60%が「今後のキャリアに不安を感じている」と回答し、その理由として「技術の急速な変化への対応」「若手との競争」が上位に挙げられています。
しかし、リスキリングの必要性を理解していても、「何を学ぶべきか」「どう学ぶべきか」という点で迷いを抱える方も少なくありません。
また、実際に始めてみても、拙速にで進めてしまって失敗してしまったというケースもしばしば聞かれます。
よってこの記事では、40代ITエンジニアが陥りがちなリスキリングの失敗パターンと、それを回避するための実践的なアプローチについて解説します。



ぜひ、リスキリングの失敗パターンを事前に掴んでいただき、効率良く進めるヒントにしてくださいね。
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40代ITエンジニアのリスキリング失敗談から学ぶ
まずは実際にどういった失敗談があるのかをいくつかみていきましょう。
目的なきスキルアップの末路:インフラエンジニアのSさん
A社のインフラエンジニアだったSさん(45歳)はクラウド技術の台頭を感じ、「とりあえずAWSの認定資格を取得しよう」と考えました。
3か月の猛勉強の末に資格取得には成功したものの、実務での活用機会はなく、結局は表面的な知識だけで終わってしまいました。
この失敗の本質は
- なぜその技術を学ぶのか
- どのようなキャリアを目指すのか
という明確なビジョンがないまま学習を進めたことにあります。
技術習得自体が目的となってしまい、それをどう活かすかという視点が欠けていたのです。
トレンド追従型学習の限界:システム開発者のYさん
B社のシステム開発者のYさん(42歳)は、2018年にブロックチェーン技術が注目されると「これが次の主流になる」と考えて、独学で技術を習得しました。
しかし、3年後に振り返ると当時学んだフレームワークの多くは既に使われなくなっており、投資した時間が無駄になったと感じています。
IT技術のトレンドの寿命は短くガートナーのハイプサイクル理論が示すように、多くの技術は「過度な期待のピーク」から「幻滅の谷」へと急速に移行します。
表面的なトレンドだけを追いかける学習は、長期的なキャリア構築に寄与しないケースが多いのです。
「独学だけで十分」という思い込み:プログラマーのTさん
C社のTさん(47歳)はプログラミング歴20年以上のベテランでした。
彼は「自分は経験が豊富だから独学で新技術もマスターできる」と考えて、オンライン講座やコミュニティ参加を避けてきました。
しかし、機械学習プロジェクトに参画した際に独学だけでは培えない視点や実務的なノウハウの不足に直面して、苦戦を強いられることになります。
デロイトのレポートによれば技術者の学習において「他者との対話」による知識獲得は、独学と比較して約30%高い知識定着率を示しています。
特に40代以上のITエンジニアにとって、異なる視点や経験からの学びは固定観念を打破し、新しい発想を生み出す源泉となることは必至です。



なるほど。無計画さや流行りに乗るだけの学習、思い込みなどは俺もついやってしまいそうなことばかりなんで、注意しようっと・・
40代ITエンジニアに忍び寄る3つのキャリアリスク
また、40代に差し掛かるにあたって浮き彫りになってくるキャリアリスクというものもあります。
こちらでは、それについて具体的に見ていきましょう。
技術の陳腐化
厚生労働省の調査によれば、IT業界の40代以上の転職成功率は30代と比較すると約15%ほど低下してしまうと報告されています。
そのおもな理由は「最新技術への対応力不足」です。
企業が若手ITエンジニアを採用する理由の上位に「最新技術への順応性」が挙げられている現実を考えると、40代ITエンジニアにとって技術の陳腐化は深刻なリスクと言えるでしょう。
とくに人工知能やクラウドネイティブ開発、ブロックチェーン、量子コンピューティングなど過去10年で急速に発展した分野では、教科書的な知識よりも実践的な経験が重視されます。
この「経験値ギャップ」を埋めるためには、計画的なリスキリングが不可欠です。
「専門性の罠」に陥る危険性
長年特定の技術や領域に特化してきたITエンジニアは、その専門性で評価される一方でキャリアの選択肢が狭まるというジレンマに直面します。
日本マイクロソフトの調査では、40代以上のITエンジニアの約40%が「専門性の高さがかえって転職や職種変更の障壁になっている」と感じていることが報告されています。
たとえば、COBOLやFortranなどのレガシー言語のスペシャリストは、そのスキルセットがメインフレームを利用する金融機関などでは重宝されますが、スタートアップや新興企業ではほぼ需要がありません。
これは「専門性の罠」の典型例です。
年収の天井を突破できない構造的な問題
日本の40代ITエンジニアの平均年収は約700万円とされていますが、この数字は40代後半から50代にかけてほぼ横ばいとなる傾向があります。
リクルートキャリアの調査によれば、年収1,000万円を超えるITエンジニアは全体の約7%に過ぎず、その多くはマネジメント職か特定の高度専門職に就いている人材です。
純粋な技術職として年収の天井を突破するためには
- 高度な専門性
- ビジネス価値
への変換能力が必要ですが、従来型のエンジニアリングスキルだけでは達成が難しくなっています。



40代という年齢に差し掛かって今後のキャリアを見据えると、考えないといけないことがさらに増えるのが現状ですね。
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リスキリングに失敗する人に共通する5つの特徴
こちらでは、リスキリングに失敗しないための反面教師として、リスキリングに失敗しやすい人の特徴をいくつかまとめてみました。
短期的な視点でのスキル選択
リスキリングに失敗するITエンジニアの多くは、「今」求められているスキルにのみ注目し、5年後や10年後を見据えた学習計画を立てていません。
世界経済フォーラムのFuture of Jobs Reportによれば、今後5年間で仕事に必要なスキルの約40%が変化すると予測されており、短期的視点だけでは持続的なキャリア構築は困難です。
成功するリスキリングには、特定の技術だけでなくその背景にある原理原則や思考法を学ぶ姿勢が重要です。
たとえば、特定のフレームワークだけを学ぶのではなくそのフレームワークが解決しようとしている本質的な問題や、設計思想を理解することで技術の変化にも柔軟に対応できるようになります。
学び方そのものの更新を怠る
多くのベテランITエンジニアはかつての成功体験から「自分の学習スタイル」を確立していますが、情報環境や学習リソースが劇的に変化した現代ではその学習方法自体が最適でなくなっているケースが少なくありません。
また、ハーバードビジネスレビューの調査によれば、効果的な学習には「実践」「フィードバック」「内省」「知識のアップデート」というサイクルが不可欠です。
しかし、一人で黙々と学ぶ従来型の方法ではこのサイクルを回すことが困難で、とくに「フィードバック」の欠如は誤った理解や視野の狭さにつながりやすいとされています。
孤立した学びによる視野の限界
同僚や他業種の人々との交流なく孤立して学ぶITエンジニアは、共通の思考バイアスに陥りやすく革新的な発想や異分野からのインスピレーションを得る機会を逃しています。
マッキンゼーの調査では、「多様な背景を持つチームでの学習」が個人の独学と比較して約25%高いイノベーション創出率を示すことが明らかになっています。
とくに、40代エンジニアにとって重要なのは、単なる「技術コミュニティ」ではなくビジネス視点や市場動向、異業種の知見を交換できる「学びのコミュニティ」への参加です。
忙しさを言い訳にする
「仕事が忙しくて学ぶ時間がない」というのは、リスキリングに失敗するITエンジニアからよくいう言葉です。
実際に日本のエンジニアの週あたりの自己学習時間は、平均4.2時間とアメリカ(7.5時間)や中国(8.1時間)と比較して大幅に少ないことが分かっています。
この差は、単なる時間の問題ではなく「学習への優先度」の差と言えるでしょう。
成功するITエンジニアは、忙しい中でも学習のための時間を確保して例えば通勤時間や休憩時間を活用するなど「スキマ時間の最適化」を実践しています。
知識インプットで終わらせる
技術書を読んだりオンライン講座を受講したりしても、それを実践に移さなければ真の習得には至りません。
ナショナルトレーニングラボラトリーの「ラーニングピラミッド」によれば、読書や講義だけの学習定着率は約10%に過ぎず、実践と教授(他者に教える)を組み合わせた学習では約90%の定着率があるとされています。
リスキリングに失敗するITエンジニアの多くは、「インプット型学習」に比重を置き過ぎて、実践やアウトプットの機会を作れていないのです。



忙しさを言い訳にすると言うのは耳が痛い話だな。あと、自力での学習だと視野が狭くなるって言うのはたしかにそうだよな・・
キャリアアップする40代ITエンジニアの学びのカタチ
これまでのリスキリングに関する失敗談やキャリアリスク、失敗する人の特徴を理解した上で、どのような学びのカタチにすればいいのかをまとめました。
線で考えるスキル獲得戦略
成功するリスキリングでは、個別の技術を「点」として捉えるのではなくキャリアの「線」としてスキルを位置づけることが重要です。
たとえば、「Pythonを学ぶ」という点ではなく「データ分析スキルを強化してビジネス課題解決に活かせるエンジニアになる」という線で考えることで、学習の方向性が明確になります。
IDCの調査によれば、複数のスキルセットを「Tスタイル」または「πスタイル」で組み合わせたエンジニアの市場価値は、単一領域のスペシャリストと比較して約35%高いとされています。
とりわけ、技術スキル&ビジネススキルの組み合わせは、40代以降のキャリア発展において強力な武器です。
技術スキルと経営視点の組み合わせ
純粋な技術力だけでは、40代以降のキャリアには限界があります。
大手人材会社のエグゼクティブサーチデータによれば、年収1,000万円を超えるITプロフェッショナルの90%以上が、「技術知識」と「ビジネス理解」の両方を備えていることが分かっています。
たとえば、クラウド技術の専門家であっても、それをビジネスコスト削減やアジリティ向上にどう結びつけるかという視点がなければ経営層と真の対話はできません。
40代ITエンジニアにとって、技術とビジネスの架け橋となる「技術翻訳者」としての役割は若手エンジニアと差別化できる強みです。
効果的なネットワーキング
同じ課題や悩みを持つ同世代のITエンジニアとの交流は、リスキリングの成功率を高める重要な要素です。
日本IBM社内調査によれば、メンターを持つITエンジニアは持たないITエンジニアと比較して、新しい役割への移行成功率が約40%高いという結果が出ています。
とくに40代ITエンジニアにとって「一人でもがく」よりも「共に学び高め合う仲間」を持つことで、モチベーション維持や多角的な視点の獲得につながります。
オンラインコミュニティやリスキリング専門のスクールなど、同じ志を持つ仲間との交流機会を積極的に作ることが成功への近道です。



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リスキリング成功者が実践する3つの習慣
リスキリングの失敗談とセットで事前に把握しておきたいのが、成功者の声です。
こちらでは、リスキリングの成功者は実施している学習習慣についておもなものをまとめました。
学びのコミュニティに参加する
リスキリングに成功している40代ITエンジニアに共通するのは、学びのコミュニティへの積極的な参加です。
グロービスの調査によれば、何らかの学習コミュニティに所属しているエンジニアはそうでないエンジニアと比較して、年間平均収入が12%高いという結果が出ています。
これは単に「勉強会に参加する」という表面的な活動ではなく、異なる背景や経験を持つプロフェッショナルとの対話を通じて、自らの思考の枠を広げる機会を得ているからです。
とくに「同質性の高い環境」で長年働いてきたITエンジニアにとって、多様な視点との接触は新たな発想の源泉となります。
実践と振り返りを繰り返す
成功するITエンジニアは「学習→実践→振り返り→改善」というサイクルを意識的に回しています。
スタンフォード大学の研究によれば、「意識的な振り返り(リフレクション)」を取り入れた学習は、そうでない学習と比較して約23%高い習熟度を示しているそうです。
たとえば、新しい技術を学んだ後に小さなプロジェクトで実践し、うまくいった点・いかなかった点を振り返り、次の学習に活かすというサイクルを繰り返します。
そうすることで、単なる知識の蓄積ではなく実践的なスキルとして定着していくでしょう。
専門家からのフィードバックを受ける
一流のアスリートにコーチがいるように、プロフェッショナルのITエンジニアにも技術的フィードバックを与えてくれる存在が重要です。
アクセンチュアの調査によれば、定期的なフィードバックを受けているエンジニアはそうでないエンジニアと比較して、キャリア満足度が約35%高いという結果が出ています。
40代ITエンジニアにとって、長年の経験から築いた「思い込み」や「固定観念」を打破するためには客観的な視点からのフィードバックが不可欠です。
専門的なコーチングやメンタリングを受けることで、自己認識のギャップを埋めて効果的なリスキリングが可能になります。



やはりこうしてみると、コミュニティの確保したり専門家のフィードバックを受けたりと、自力だと限界があるんだと感じるな。
40代からのリスキリング成功ロードマップ
これまでの内容を踏まえて、40代ITエンジニアがリスキリングを成功させるためのフローをまとめました。
リスキリングの第一歩は、自分自身の強み・弱み・興味を客観的に分析することです。
グロービスのキャリアコーチングでは、技術スキルマップとキャリアビジョンシートを組み合わせた自己分析フレームワークを提供しています。
重要なのは、自分が本当に情熱を持てる領域と市場価値の高い領域の交差点を見つけることです。
たとえば、セキュリティやクラウドアーキテクチャ、AI/MLといった技術領域と、PMやビジネス分析、プロダクト戦略などのビジネス領域から、自分の強みを活かせる組み合わせを探ることが重要です。
40代エンジニアの多くは、仕事や家庭の責任を持ちながらリスキリングに取り組む必要があります。
効果的な時間確保のテクニックとして、以下のような方法が有効です。
- 早朝学習
- 出社前の1時間を固定の学習時間とする
- ランチタイム学習
- 昼食時の20〜30分をオンラインコンテンツの視聴に充てる
- 通勤時学習
- 通勤時間をオーディオコンテンツの聴取に活用する
- 週末集中学習
- 週末の特定時間(例:土曜日の午前中)を学習に固定する
これらの時間管理テクニックを組み合わせて週単位での学習計画を立てることで、忙しい日常の中でも着実にリスキリングを進めることができます。
新しい知識やスキルを実務に活かすことで、学習の定着率は大幅に向上します。
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- 小さな実験
- 新しく学んだ技術やフレームワークをリスクの低い小規模なプロジェクトや業務改善に適用する
- ランチ勉強会
- 学んだ内容を同僚に共有してフィードバックを得る機会を作る
- 業務プロセス改善
- 学びを活かして既存の業務プロセスを改善する提案を行う
- 副業プロジェクト
- 本業とは別に新しいスキルを活かせる小規模な副業やプロボノ活動を行う
これらの実践を通じて、単なる「知識」から「実践的スキル」へと昇華させることが可能です。
グロービスの学び放題を活用した90日間の変化事例
元通信キャリアのインフラエンジニアだったSさん(45歳)は、クラウド技術とビジネス戦略を組み合わせて学ぶために【GLOBIS 学び放題】
90日間の学習プログラムでは、以下のような変化が見られました。
- 1か月目
- クラウド最適化とコスト戦略の知識を獲得し、自社のクラウド移行計画の見直し提案を実施
- 2か月目
- データ分析基礎とビジネスKPI設計を学び、技術指標と経営指標を結びつけた新しいダッシュボードを開発
- 3か月目
- DX戦略を学び、部門横断のDXプロジェクトチームのリーダーに抜擢
Sさんは「技術だけでなく経営視点を学べたことで、経営層と対等に対話できるようになった」と振り返ります。



この事例では、短期間でも集中的・体系的に学ぶことで実務上の変化を生み出せることを示しています。
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まとめ|リスキリングは学び方から変えていく
40代のITエンジニアには、20代や30代にはない大きな強みがあります。
それは経験に基づく判断力と業界・ビジネスへの理解で、リスキリングの成功にはこれらの強みを活かしながら新しい技術やビジネスの潮流を取り入れる柔軟性が不可欠です。
グロービスの調査によればリスキリングに成功した40代ITエンジニアの多くが、自分の経験を否定せず、新しい知識と融合させる姿勢を持っていることが分かっています。
つまり、白紙に戻るのではなく、これまでの経験をアップデートするという視点がカギとなるのです。
次の一歩を踏み出すチェックリスト
リスキリングの第一歩として、以下のアクションを推奨します。
- 自分のキャリアビジョンを明確化する(3年後、5年後にどうなっていたいか)
- 現在の強み・弱みを客観的に分析する
- 市場価値の高いスキルセットを調査する
- 学びのコミュニティに参加する
- 週に最低5時間の学習時間を確保する計画を立てる
- グロービスの学び放題の無料体験に申し込み、実際のコンテンツを体験する
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1週間の無料体験があるし、自分に合った学びの場であるかどうかを確認してみようかな・・
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