
「リスキリング」と「リカレント」――最近、ニュースやSNSでよくこの2つの言葉を目にします。
どちらも「学び直し」に関する言葉ですが、実は意味が大きく異なることをご存知でしょうか?
会社がリスキリング研修を始めるらしい・・
リカレント教育で収入アップを目指したい・・
など、言葉は聞いたことがあるものの、明確な違いがわからずに自分にはどちらが必要なのかわからないも少なくありません。
この記事では、リスキリングとリカレントの違いを明確に解説し、会社員が個人で始められるリカレント教育の種類、さらに利用できる補助金・助成金制度まで詳しくご紹介します。
ウリ収入アップを目指して学び直しを検討している方は、ぜひ最後までお読みください。
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リスキリングとリカレントの違いを解説
まずは、リスキリングとリカレントの基本的な違いを理解しましょう。
どちらも「学び直し」という点では共通していますが、主体者や目的が異なります。
リスキリングとは?企業主導の学び直し
リスキリング(Reskilling)とは、企業が主体となって従業員のスキルを再開発する取り組みです。
DXの推進や新規事業への配置転換を目的として、企業が従業員に新しいスキルを習得させます。
具体的には、以下のような特徴があります。
- 企業が主導:会社が研修プログラムを用意し、従業員に受講を促す
- 業務時間内に実施:多くの場合、勤務時間中に研修を受けることができる
- 費用は企業負担:研修費用は会社が負担するため、従業員の金銭的負担はない
- 配置転換が前提:営業職からIT職へなど、社内での役割変更を伴うことが多い
例えば、製造業の企業が工場のオートメーション化を進める際に、現場作業員にITスキルやロボット操作技術を習得させるケースなどがリスキリングにあたります。
リカレントとは?個人主導のキャリアアップ
一方、リカレント(Recurrent Education)は、個人が主体的に選択する学び直しを指します。
「リカレント」は英語で「繰り返し」「循環する」という意味があり、学校教育を終えた後も、仕事と学習を交互に繰り返すライフスタイルを表しています。
リカレント教育の特徴は以下の通りです。
- 個人が主体:自分のキャリアプランに基づいて、学ぶ内容を自由に選択できる
- 業務外に実施:仕事を続けながら夜間や週末に学ぶ、または一時的に仕事を離れて学校に通う
- 費用は個人負担が基本:学費は自己負担となるが、後述する補助金制度を活用できる場合がある
- キャリアの選択肢を広げる:転職、独立、副業など、自分のキャリアの幅を広げることが目的
例えば、会社員が夜間のビジネススクールに通ってMBAを取得したり、オンライン講座でプログラミングを学んで副業を始めたりするケースがリカレント教育にあたります。
両者の違いを表で比較
リスキリングとリカレントの違いをわかりやすく表にまとめました。
| 項目 | リスキリング | リカレント |
| 主体者 | 企業 | 個人 |
| 目的 | 企業のニーズに応じたスキル再開発 | 個人のキャリアアップ・選択肢拡大 |
| 費用負担 | 企業負担 | 個人負担(補助金活用可能) |
| 実施タイミング | 業務時間内が多い | 業務外(夜間・週末・休職中) |
| 学ぶ内容の決定権 | 企業が決定 | 個人が自由に選択 |
| 目指すゴール | 社内での配置転換・業務効率化 | 転職・独立・収入アップ |
このように、リスキリングは「会社の都合」、リカレントは「自分の都合」で学ぶという点が最大の違いです。



会社員として収入アップやキャリアチェンジを目指すなら、リカレント教育を自主的に始めることが重要になります。
会社員が個人で始められるリカレント教育の種類
ここからは、会社員が個人で始められるリカレント教育の具体的な種類をご紹介します。
金銭的余裕があまりない方でも始めやすいものから、本格的な学位取得まで幅広く解説します。
オンライン学習プラットフォーム
最も手軽に始められるのが、オンライン学習プラットフォームの活用です。
月額数千円から使えてスマホやパソコンがあればいつでもどこでも学習できるため、忙しい会社員に最適です。
主なオンライン学習サービス
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(グロ放題):ビジネススキル全般(経営戦略、マーケティング、財務、リーダーシップなど)を動画で学べる。月額1,650円~
- Udemy:プログラミングやビジネススキルなど幅広いジャンル。買い切り型で1講座1,000円~
- Schoo:ビジネススキルからIT、語学まで7,000本以上の動画。月額980円~
- Coursera:世界の名門大学の講座を受講可能。専門資格も取得できる。月額約4,000円~
オンライン学習は通勤時間や昼休みなどのスキマ時間を活用できるため、無理なく継続できます。
まずは興味のある分野を試してみて、本格的に学びたいと感じたら次のステップに進むのがおすすめです。
専門学校・社会人大学院
より体系的に専門知識を習得したい場合は、専門学校や社会人大学院への進学を検討しましょう。
学位や修了証明書を取得できるため、転職時の強力なアピール材料になります。
社会人向けの教育機関の特徴
- 夜間・週末コース:平日夜間や土日に授業を開講しているため、働きながら通学可能
- オンライン授業:完全オンラインや対面とオンラインの併用で学べる大学院も増えている
- 実務に直結:ケーススタディやグループワークを通じて、すぐに仕事に活かせる知識を習得
- 人脈形成:同じ志を持つ社会人と出会い、ビジネスネットワークを広げられる
人気の専門分野
- MBA(経営学修士):経営戦略、マーケティング、財務などビジネス全般を学ぶ
- データサイエンス:データ分析、統計学、機械学習などIT時代に必須のスキル
- 会計・税理士:簿記、財務会計、税法など専門性の高い資格取得を目指す
- 法務・知的財産:契約法務、知財管理など企業法務のスペシャリストを目指す
学費は年間50万円~200万円程度と高額ですが、教育訓練給付金を活用すれば負担を大幅に軽減できます。



僕が社会人大学院に通って感じたメリットや気づいたことについて知りたい方はこちらの記事をご覧ください。


資格取得・検定試験
収入アップに直結しやすいのが、国家資格や民間資格の取得です。
資格手当がつく企業も多く、転職市場でも評価されやすい傾向があります。
会社員におすすめの資格
- 簿記2級・1級:経理職だけでなく、すべてのビジネスパーソンに役立つ会計知識
- 宅地建物取引士(宅建):不動産業界で必須、金融機関でも評価される国家資格
- ITパスポート・基本情報技術者:IT業界以外でもデジタルリテラシーの証明になる
- 中小企業診断士:経営コンサルタントとして独立も可能な難関国家資格
- TOEIC・英検:グローバル企業では昇進の条件になることも
- FP(ファイナンシャルプランナー):金融知識を身に付け、副業にも活かせる
資格取得の魅力は独学でもチャレンジしやすく、費用を抑えられる点です。
参考書や問題集を購入してオンライン講座を活用すれば、数万円の投資で済むケースも多くあります。
職業訓練校(ハロートレーニング)
意外と知られていないのが、在職者も利用できる職業訓練制度です。
「ハロートレーニング」と呼ばれる公的職業訓練は失業中の方だけでなく、働きながらスキルアップを目指す方も対象になります。
在職者向け職業訓練の特徴
- 低額または無料:テキスト代のみで受講できるコースも多数
- 実践的なカリキュラム:IT、経理、介護、製造など、すぐに仕事に活かせる内容
- 短期集中型:数日~数ヶ月で完結するコースが多く、計画的に学べる
- 夜間・休日コース:働きながら受講できる時間帯に開講
主な訓練科目
- IT分野:プログラミング、Webデザイン、ネットワーク構築など
- 経理・事務:簿記、パソコン会計、総務実務など
- 介護・医療:介護職員初任者研修、医療事務など
- 製造・技術:CAD、電気工事、溶接技術など



各都道府県の職業訓練センターやポリテクセンターで実施されていますので、最寄りの施設に問い合わせてみましょう。
会社員が使える補助金・助成金制度
リカレント教育を始める際の最大のハードルが「費用」です。
しかし、国や自治体が提供する補助金・助成金制度を活用すれば、経済的負担を大幅に軽減できます。
ここでは、会社員が利用できる主な支援制度を詳しく解説します。
教育訓練給付金(厚生労働省)
最も活用しやすいのが、厚生労働省の「教育訓練給付金」制度で、雇用保険に加入している会社員であれば条件を満たせば誰でも利用できます。
教育訓練給付金には3つのタイプがあり、それぞれ給付率と上限額が異なります。
- 一般教育訓練給付金
- 給付率:受講費用の20%
- 上限額:10万円
- 対象者:雇用保険加入期間が3年以上(初回は1年以上)
- 対象講座:簿記、宅建、ITパスポート、TOEICなど幅広い資格講座
例えば、20万円の簿記2級講座を受講した場合、4万円が給付されます。
- 特定一般教育訓練給付金
- 給付率:受講費用の40%
- 上限額:20万円
- 対象者:雇用保険加入期間が3年以上(初回は1年以上)
- 対象講座:税理士や社会保険労務など、速やかな再就職・早期のキャリア形成に資する講座
例えば、30万円の税理士講座を受講した場合、12万円が給付されます。
- 専門実践教育訓練給付金
- 給付率:受講費用の50%(資格取得等で70%に増額)
- 上限額:年間40万円(3年で最大120万円)、資格取得時は年間56万円(3年で最大168万円)
- 対象者:雇用保険加入期間が3年以上(初回は2年以上)
- 対象講座:MBAや看護師など、中長期的なキャリア形成に資する専門的・実践的な講座
例えば、年間100万円のMBA講座(2年制)を受講して修了後に資格を取得した場合、初年度70万円、2年目70万円、合計140万円が給付されます。
申請方法
- ハローワークで「教育訓練給付金支給要件照会」を行い、受給資格を確認
- 厚生労働省指定の講座を選択(厚生労働省のウェブサイトで検索可能)
- 講座を受講し、修了
- 修了日の翌日から1ヶ月以内にハローワークで支給申請



給付金は受講修了後に支給されるため、まずは受講費用を自己負担する必要がある点に注意しましょう。
人材開発支援助成金(企業経由で利用)
会社が費用を負担して従業員に教育訓練を受けさせる場合、企業が受け取れる助成金です。
直接個人が受け取るものではありませんが、上司や人事部に相談することで、会社負担で研修を受けられる可能性があります。
制度の概要
- 対象:従業員に教育訓練を実施する事業主
- 助成内容:研修費用や研修期間中の賃金の一部を助成
- メリット:従業員は無料または低額で研修を受けられる
例えば・・
この資格を取りたいので、会社で人材開発支援助成金を活用して費用を負担してもらえないか
と人事部に提案してみるのも一つの方法です。
会社にとってもメリットがあるため、前向きに検討してもらえる可能性があります。
自治体独自の支援制度
都道府県や市区町村によっては、独自のリカレント教育支援制度を設けている場合があります。
地域によって内容が大きく異なるため、お住まいの自治体の制度を確認することが重要です。
主な自治体の支援例
- 東京都:「TOKYOはたらくネット」で社会人向けセミナーを無料または低額で提供
- 大阪府:「大阪府地域人づくり事業」で職業訓練を実施
- 神奈川県:「かながわ労働センター」で働く人向けの各種講座を開催
調べ方
- 自治体の公式ウェブサイトで「リカレント教育」「学び直し」「職業訓練」などのキーワードで検索
- 市役所・区役所の雇用労働課や産業振興課に問い合わせ
- 地域のハローワークで情報収集



自治体の制度は申請期限が設けられていることが多いため、早めに情報を集めることをおすすめします。
リスキリング支援制度(経済産業省)
経済産業省は、デジタルスキル習得に特化した支援制度を提供しています。
IT人材不足が深刻化する中、政府はデジタル分野のリスキリングを強力に後押ししています。
主な制度
- 第四次産業革命スキル習得講座認定制度(Reスキル講座)
- AI、データサイエンス、クラウド、IoTなどの最先端IT分野の講座を認定
- 専門実践教育訓練給付金の対象になる
- マナパス(マナビDX)
- デジタルスキルを学べる講座を検索できるポータルサイト。
- 無料講座も多数掲載
特にIT分野へのキャリアチェンジを考えている方は、これらの制度を積極的に活用しましょう。
具体例
- データアナリスト養成講座(受講費用60万円)
- → 専門実践教育訓練給付金で最大42万円給付
- AIエンジニア育成プログラム(受講費用80万円)
- → 専門実践教育訓練給付金で最大56万円給付
デジタル分野は今後も需要が高まり続けるため、投資対効果の高い学習分野と言えます。
リカレント教育を成功させる3つのポイント
補助金制度を活用してリカレント教育を始めるのは素晴らしいことですが、成功させるためにはいくつかのポイントを押さえておく必要があります。
なぜ学ぶのかを明確に
リカレント教育を始める前に、「なぜ学ぶのか」「学んだ後にどうなりたいのか」を明確にしましょう。
目標設定の例
- 収入アップ:簿記2級を取得して経理部門に異動し、年収を50万円アップさせる
- キャリアチェンジ:プログラミングを学んでIT企業に転職し、リモートワーク可能な働き方を実現する
- 独立・副業:Webデザインのスキルを習得して副業を始め、月5万円の副収入を得る
目標が明確であれば、モチベーションを維持しやすく学習の優先順位もつけやすくなります。
ゴールから逆算して学習計画を立てることで、無駄なく効率的にスキルを習得できます。
継続できる仕組みづくり
リカレント教育で最も難しいのは「継続すること」です。
仕事と学習の両立は想像以上にハードなため、無理のない計画を立てることが重要です。
継続のためのコツ
- 学習時間を固定化:毎朝6時~7時は学習時間など、ルーティンに組み込む
- 小さな目標を設定:今週は第1章を終わらせるなど、短期目標を細かく設定
- 学習仲間を作る:SNSやオンラインコミュニティで同じ目標を持つ仲間と励まし合う
- 完璧を目指さない:忙しい日は10分だけでもOK。ゼロにしないことが大切
特に、家族の理解と協力を得ることも重要です。
学習時間の確保のため、家事の分担を見直したり休日の過ごし方を調整したりする必要があるかもしれません。
費用と将来のリターンを天秤にかける
リカレント教育には時間とお金がかかります。
投資対効果を意識して、費用対効果の高い学習を選択しましょう。
投資対効果を計算する方法
- 学習にかかる総費用を算出:受講費用+教材費+通学交通費など
- 補助金を差し引いた実質負担額を計算:総費用-教育訓練給付金など
- 将来のリターンを見積もる:資格取得による資格手当、転職後の年収増、副業収入など
- 投資回収期間を算出:実質負担額÷年間リターン増加額
計算例
- MBA取得費用:200万円
- 教育訓練給付金:140万円
- 実質負担額:60万円
- 修了後の年収増:年100万円アップ
- 投資回収期間:約7ヶ月ラム(受講費用80万円)
このように数値化することで、どの学習に投資すべきか判断しやすくなります。



また、補助金制度を最大限活用することで、実質負担を大幅に減らせることも理解できます。
まとめ:あなたに合った学び直しを始めよう!
最後に重要なポイントをおさらいしましょう。
リスキリングは企業主導で、リカレントは個人主導の学び直しという違いがあります。
収入アップやキャリアチェンジを目指すなら、リカレント教育を自主的に始めることが重要です。
オンライン学習や専門学校、資格取得、職業訓練など、会社員が始められるリカレント教育の選択肢は豊富で、自分の目標と予算に合わせて選べます。
また、教育訓練給付金をはじめとする補助金制度を活用すれば、経済的負担を大幅に軽減できて最大で受講費用の70%が給付される制度もあります。
学び直しによって、新しいキャリアの可能性が必ず広がります。
あなたも今日から、自分に合ったリカレント教育をスタートさせてみませんか?
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